「ラナ・プラザ」での崩落事故
欧米ビッグブランドの服飾品の下請けの縫製工場にて
2013年4月24日にバングラデシュで8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」で死者1,134人、負傷者2,500人以上を出す最悪の惨事が発生した。
1995年に韓国で発生した三豊百貨店崩壊事故を上回る大惨事になった。
起きた原因は震災や津波など自然災害ではなく、ファッション産業が引き起こした完全な人的災害である。
8階建てで5つの縫製工場が入居しているビルでは、錚々たる欧米ビッグブランドの服飾品の下請けをしていた。
このビルには縫製工場、銀行、商店などが入居していたが、朝のラッシュアワーに事故が重なり被害が大きくなった。
ニューヨーク大学スターンスクールの「ビジネスと人権センター(Center for Business and Human Rights)」が発表した報告書によると、
事故前日の4月23日、「ラナ・プラザ」の従業員らは、8階建てのビルの異変に気づいていたという。
壁や柱にひびが入っているのを発見しマネージャーに報告し、地元警察は検査のための退去命令を出していた。
それにも関わらず、ビルのオーナーは問題ないと主張。
工場マネージャーらは従業員に仕事に戻らなければ、解雇の可能性があると話していた。
解雇を恐れた従業員がいつも通り出勤した翌日、午前9時頃にビルが停電し、違法に増築したビルの上層部に設置された発電機が稼働し、発電機の振動と動き出したミシンなどの機械の振動が共鳴して建物を揺らし、崩壊を引き起こした。
ファッション業界の未曾有の大惨事である。
以前から同国の縫製工場では火災による死亡事故が多発していたことも判明し、事故や災害に対する安全意識が欠如した製造現場の改善と労働条件の向上を求める声が高まっていった。
ファッション業界の問題が浮き彫りに
この大惨事から、グローバル展開する日本を含む世界の大手衣料品業者が、バングラデシュの劣悪な労働環境や安価な労働力に依存して利益を上げている状況が浮き彫りとなり、世界的に業界の論議を生んだ。
事故から6年 アパレル業界の未来へ
社会全体で取り組まなければならない
バングラデシュのみならず発展途上国が抱える縫製工場の労働問題を解決するために、どのような取り組みが必要となってくるのか。
先進国の政府をはじめ、企業や消費者など社会全体で取り組まなければ、本当の解決にはならない。
その鍵となるのが”透明性”
「ファッション業界は分業制が根強く、企業によっては商社が間に入ることで、自社の製品の背景を知らないことも少なくなかった。
消費者の小さな気づき、例えば『この服はどこで作られたんだろう?』といった疑問を持つことからでも、生産背景を明確にしていくべき」。
現在では製品の背景を明らかにしている企業が増えており、エシカルファッションに対する意識も以前に比べて高まっている。
ラナ・プラザの事故を受けて、関心を持つ人は増えてきた。この数年で社会が大きく変化したとは言い切れないが、バングラデシュをはじめアパレル産業が抱える問題を明るみに出すことが、未来への戒めとなるのは確かだろう。