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アパレル業界の未来についての考察 2019年版

目次

アパレル業界の未来について

-国内アパレル企業の課題と進むべき道-

日本ではアパレル不況が叫ばれて久しいが、グローバルではアパレル産業は依然として成長産業に属する。

グローバルで成長しているアパレル企業の勝ちパターンは、

①高付加価値型(ラグジュアリー、アクセシブルラグジュアリー)

②グローバルSPA型

③カテゴリーキラー型の3つに分けられる。

これらの企業は、国内アパレル企業には無い高い収益性と成長性を誇っている。

日本のアパレル企業

グローバル展開の遅れ

一方、日本のアパレル企業は、ファーストリテイリングや良品計画などのごく一部を除きグローバルでの勝ちパターンを実践できていない。少子高齢化を起点として国内市場が厳しくなることは10年以上前から分かっていたことであり、他の消費財業界では積極的にグローバル展開が試みられてきた。ところが、アパレル業界では少なからずの企業により海外進出が試みられてきたものの成功ケースが少なく、未だに殆どの企業がガラパゴスの国内市場に留まり遅遅として海外展開が進まないのが現状だ。業界全体としてはグローバル展開の遅れが大きな課題であるにも関わらず、依然として「アパレル不況」にはじまる国内市場中心の議論を重ねている。

今後、国内アパレル市場について

今後、国内アパレル市場では、二極化の進行と中間価格帯であるトレンドマーケットの落込みが益々進行する。トレンドマーケットでは消費者セグメントの細分化に伴い、服に対する好みや服の買い方は益々多様化され、デジタルがもたらす変化も相まってトレンドの小粒化と短サイクル化が進行する。グローバルと比較すると中間価格帯市場が大きかった日本の特徴は徐々に薄まり、ラグジュアリーとマスボリュームに二極化するという欧米型の市場構造に近づいていく。このような中で、ラグジュアリー市場とマスボリューム市場では、グローバル企業の存在感が増していく。一方、中間価格帯のトレンドマーケットでは、市場の縮小とトレンドの小粒化・短サイクル化の同時進行が起き、市場を面で押えることが難しくなる。言い換えると、国内のトレンドマーケットのみで大きな売上を作ることは益々困難となる。

国内市場に頼る大手企業が苦しむ一方、個性のあるデザイナーズブランドやストリートブランドといった次代の芽はこれまで以上に台頭してくる。デジタリゼーションが進む中で、現在は10年20年前と比較すると、アパレルビジネスへの参入障壁が格段に低くなった。バリューチェーンを支えるためのプラットフォーマーの登場により、トレンドマーケットでは才能のあるデザイナーによる新しいブランドが活躍しやすい環境となっている。ZOZOタウンを擁するスタートトゥデイのようなグローバルECプラットフォーム、ECビジョンのようなサプライチェーンプラットフォームは、プラットフォーマーの典型例である。中間価格帯では、従来型のサラリーマンアパレル組織は(グローバル化を試みない限り)縮小均衡の一途を迫られ、市場では表向きには多くの小規模アパレルブランド、ショップが乱立する一方、裏ではアパレルのバリューチェーンを補完するプラットフォーマーが、一部では商社の機能を代替し、規模を拡大するという市場構造となる。正に、従来型のバリューチェーンのディスラプト(破壊)と再構築が起こるだろう。

海外進出にチャレンジする時期が来ている

国内アパレル企業が、次の10年、20年を勝ち残るためのオプションは多くは無い。一定規模の企業が更なる成長を求めるのであれば、グローバルでの勝ちパターンを踏まえつつ海外進出にチャレンジするしかない。一方、大極的な視点に立てば、ようやく日本も国として、ファッションやライフスタイルにおいて本格的に世界へ影響を持てるステージに来たところである。国内アパレル企業は、服が売れないなどと国内市場を嘆くのではなく、もう一度世界進出と産業界全体の成長にチャレンジするタイミングでないだろうか。

世界のアパレル産業

日本のアパレル事情について

日本ではアパレル不況が叫ばれて久しい。大手アパレルによる店舗・ブランド削減、百貨店アパレルの苦戦など、国内市場の縮小に端を発するネガティブニュースが相次いでいる。加えて、メルカリをはじめとする二次流通市場の成長やアマゾンのアパレルPB進出など、従来の業界構造を揺るがすような地殻変動も起きている。このような中で、各種メディアでは「アパレル不況」や「服が売れない時代」といった悲観的なコピーが飛び交っている。

成長機会のある海外市場を目指してきた自動車業界

しかしながら、本質的な問題は何なのであろうか。表面的な言葉に踊らされると物事の本質を見誤る。例えば、アパレル業界と同じように国内市場の縮小が課題となっている自動車業界では、不況というような言葉は全く使われていない。人口減少と若者のクルマ離れが進んだ結果、新車の国内販売台数はピーク時の2/3である500万台を割り込んでいる。カーシェアサービスのようなシェアリングエコノミーの台頭や、自動運転などのデジタル化による変革にも晒されている。このような中で、トヨタ、日産、ホンダ等の日本のメーカーは90年代以来基本的に増収を続けてきた。国内市場が厳しくなる中でなぜ増収できたかというと、言うまでも無くグローバル展開を進めてきたからである。国内市場がいずれ頭打ちになることは、10年以上も前から誰しもが分かっており、世の中のBtoC事業者の多くが成長機会のある海外市場を目指してきたのだ。

国内アパレルは海外進出に苦労している

一方、国内アパレル業界は旧態依然としたまま国内市場にしがみつき、グローバル化が最も遅れている業界になってしまった。ファーストリテイリング、良品計画、サカイといった成功例は出てきてはいるものの、多くの国内アパレルは成長機会のある海外進出に苦労しているのが実態だ。これこそが業界が解決すべき本質的な課題である。なぜ日本のアパレル企業は海外展開が苦手なのか、その理由は後述するとして、まずはグローバルで見たときのアパレル産業の将来性について説明したい。

グローバルにみると、アパレル産業は依然として成長産業に属する。最新の予測では、グローバルのアパレル市場は実質ベースで2025年までに年平均成長率3.6%、インフレを加味した名目ベースは7.6%であり、2015年に1,306 bil$だった市場は、2025年に2,713bil$(名目ベース)にまで成長する。特に、伸びが大きい市場は中東・アフリカや東欧で、続いてアジアとなる。背景には、人口の拡大、新興国における中間層の拡大、グローバルSPAによるファッションの浸透、富裕層の拡大などがある。

また、先進国である北米や西欧においても、それぞれ2.0%、0.5%の成長が見込まれており、構造的に継続的マイナス成長が見込まれる日本とは対照的である。このように、グローバルでみるとアパレル市場には未だ成長の余地があり、実際にグローバル展開に成功している企業はその恩恵にあずかっているのだ。

グローバルにおける勝ちパターン

それでは、グローバルではどのようなアパレル企業が成長しているのだろうか。グローバルでの勝ちパターンは大別すると、

①高付加価値型

②グローバルSPA型

③カテゴリーキラー型

の3つに分けられる。

グローバルの勝ち組アパレル企業は依然として成長しており、平均営業利益率で14%と国内アパレル企業には無い高い収益性を誇る。

高付加価値型(ラグジュアリー/アクセシブルラグジュアリー)

高付加価値型とは、所謂ラグジュアリー/ アクセシブルラグジュアリーブランドを指し、ストーリーやクリエイティビティをベースとした所謂“ブランド”という付加価値を創り上げることで高い収益を生むビジネスモデルを指す。高付加価値型の鍵はもちろんどのようにしてブランド力をつけるかという点にあるが、ビジネスモデルとしての重要なポイントは、カテゴリー拡大(ライフスタイル化)によるブランド力と収益性の両立にある。一般的に高付加価値型のブランドは、靴や鞄といったアクセサリーから香水、アパレル、ひいては時計、宝飾品、インテリアまで、アイテムカテゴリーを増やすことでライフスタイルブランドとしてのブランド力を確立すると同時に、多様な収益性のアイテムをミックスさせることで高収益の体質を実現する。例えば、鞄は80~90%強の粗利を稼ぐ一方でアパレルは廃棄ロスが大きく粗利は40%以下に留まる。但し、ブランド力を保つために、アパレルラインによるランウェイショーを開くことは重要だ。米系のアクセシブルラグジュアリーブランドの場合この傾向は更に顕著で、一部には、生産拠点をアジアに移し低コスト化を進めることでバッグ類の粗利が95%に達しているブランドさえある。

グローバルSPA型

グローバルSPA型とは、製造小売型のストアブランドをグローバル展開するビジネスモデルを指す。具体的には、ZARAを擁するInditexやH&Mに代表されるファストファッションプレーヤーや、ファーストリテイリング、GAPのようなマスベーシックプレーヤーが存在する。グローバルSPA型のビジネスモデルは、ファストファッション寄りなのかベーシック寄りなのかにより、付加価値の作り方やサプライチェーンに差異があるものの、グローバルで大規模小売店舗を展開することでスケールメリットとブランド認知向上を享受していくという点では共通している。
近年グローバルSPA型の成長は目覚しく、主要プレーヤーの売上合計を取ると過去5年マーケット全体の伸びの倍の成長を遂げてきた。グローバルSPAの製品はそのコストパフォーマンスの高さにより、先進国から新興国まで多くの消費者を惹きつけていることにある。グローバルSPAによるシェアの拡大は、先進国では一服した感があるが、新興国ではこれからであり今後も成長は続くであろう。但し、プレーヤーの数が増えた結果、勝ち負けがはっきりするようになっており、最近はアバクロンビー&フェッチやトップショップのように減収に沈むSPAも多い。

カテゴリーキラー型

カテゴリーキラー型は、文字通り特定のカテゴリーに特化することで安定的な事業運営と収益性の向上を図るビジネスモデルであり、アパレル業界における所謂ニッチ戦略である。カテゴリーの設け方としては、スポーツ、アウトドアといった領域から、スーツ、靴、鞄、下着、ジーンズといったアイテム別まで幅広い。
但し、業界そのものが成熟した昨今では殆どのカテゴリーにおいて、定番ブランドが出来上がってしまい、ニッチ戦略のみで成長を志向することが難しくなってきている。そのため、ベルルッティのようにライフスタイル化によりラグジュアリービジネスに転換を図ったり、スポーツブランドがアパレル領域に進出しグローバルSPA化を図るなど、カテゴリーキラーから高付加価値型やグローバルSPA型に転換するような流れも見られる。

日本のアパレル企業の課題

日本のアパレル企業の多くがグローバル化に遅れている事実に触れたが、言い換えると殆どの企業が第2章で触れたグローバルでの勝ちパターンを実践できていないということである。もちろん、グローバルSPA型のファーストリテイリングや良品計画、カテゴリーキラー型のアシックスや鎌倉シャツのように、一部ではグローバル展開に成功するプレーヤーが台頭してきているものの、多くのプレーヤーが依然として国内市場に依拠している。高付加価値型に代表されるラグジュアリービジネスに至っては、日本企業が最も苦手とする分野であり、サカイやコムデギャルソンのようなアパレル中心のデザイナーズブランドは存在するものの、カテゴリーを増やしてライフスタイルブランドとしてビジネスを成功させた例は皆無である。

それでは、なぜこのような事態になってしまったのであろうか?

背景には大きく三つの理由がある。

ガラパゴス的な日本固有の市場・競争環境

第1に、ガラパゴス的な日本固有の市場・競争環境にある。アパレル市場を、価格帯別に大きく、ラグジュアリー、トレンド、マスボリュームの三つのマーケットに分けると、日本は海外と比較して、中間価格帯のトレンドマーケットが非常に大きかった(図4)。背景には、弊社がフォロアー層と呼んでいる自らの価値観が希薄でトレンドに流されやすい中間層が存在していたことにある。日本のファッションビジネスは、フォロアー層に対するマーケティングで成り立ってきたと言っても過言ではなく、その中身は百貨店、SCといったフォロアー層が集まる館に対する出店と、雑誌・メディアと一体となったプロモーションであった。即ち、フォロアー層に対し、毎シーズン業界をあげて新しいトレンドを作り、トレンド消費を煽るというビジネスを繰り返してきた。結果、ブランドの世界観やものづくりにおける独自性の追求が進まず、逆に同質化が進んだ。

しかしながら、消費社会の成熟化、デジタル化に伴い、現在このフォロアー層に分裂が生じている。フォロアー層は様々なグループに分かれ、独自の価値観を持った消費者セグメントを形成し、それぞれ異なった消費行動をとり始めており、従来型のファッションマーケティングが通用しなくなっているのだ。実は、このフォロアー層の細分化(図5)はグローバルで見ると自然なことであり、海外では既に存在しているタイプの普遍的な消費者セグメントが日本国内にも出現してきているだけである(スペースの都合上、各セグメントの詳細説明は割愛しますが、ご関心のある方は個別にお問い合わせ下さい)。
フォロアー層は戦後の高度経済成長と人口ピラミッドの偏りが生んだ日本固有の巨大な消費者セグメントであり、国内アパレル企業のみならず百貨店などの流通業の多くが頼ってきた市場である。この市場が消費者の変化に伴い大きく変容していること、そして従来型のファッションビジネス、ものづくりに慣れ親しんだ企業の多くがその変化に対応できていないことが、アパレル不振の根源である。別の言い方をすると、消費者が先にグローバル化してしまい、企業側がおいてけぼりになっているとも言える。

海外展開の基本を理解せずに、国内市場と同じような戦い方で進出

企業側のグローバル化が進まない第2の背景に、日系アパレルの多くが海外展開の基本を理解せずに、国内市場と同じような戦い方で進出してしまい失敗を重ねたことにある。これまで述べたように、海外は国内とは異なる市場・競争環境であり、その中ではグローバルの勝ちパターン、ブランドの作り方が存在する。そのような状況を鑑みず、国内アパレル企業の多くが、国内市場と同じく出店ありきで海外進出を試みてきた。グローバルで成功するためには、グローバルの勝ちパターンを踏まえたうえで、各領域の“ブランド”として消費者に認知されることが必要だが、広告と出店で館に集まる消費者を捉えるビジネスに慣れてしまった日系アパレルの多くが海外でブランド構築が出来ずに苦しんでいる。投資が必要な路面店は避け、海外でも日系の百貨店から出店していくような企業が多いが、それはブランド戦略を無視した典型的な負けパターンである。例えば中国市場のように、ブランド力でテナント料やディスカウント圧力が変わる市場では、ブランド力をつけずに出店を重ねても、たとえ100店舗出店しても利益は残らない。グローバルでいかにしてブランドを構築していくか、その戦略無くして出店を続けても海外展開はうまくいかないのだ。最近では、マッシュホールディングスや鎌倉シャツのような成功例が出てきてはいるものの、多くの企業が海外でのブランド構築に苦しんでいるのが現状だ。

経営者の姿勢

そしてグローバル化が遅れた最後のピースは、経営者の姿勢である。上述したような海外戦略を描いたとしても、実際に実行するためにはお金と時間がかかる。やり抜くためには、経営者の強い意志と不退転の覚悟が必要だ。よく海外展開がうまくいかない理由を、グローバル人材やキャッシュの不足ならびに企業規模で説明する経営者がいるが、それは海外展開への本気度が足りない典型である。ファーストリテイリングも良品計画も海外展開を始めた際、リソースは十分でなかった。韓国のアパレル企業E-LANDは、現在でこそ中国市場で大成功を収めているが、経営者が不退転の覚悟で中国進出をした最初の10年間は泣かず飛ばずであった。それでもあきらめずにビジネスを続け、失敗を繰り返したことが今日の成功に繋がっている。中途半端に投資・進出を行い、撤退を繰り返してお茶を濁す企業が多い日本とは大違いである。このような状況では、多くのアパレル経営者が国内市場に甘えていると批判されてもおかしくないだろう。

以上の三つが、国内アパレル企業のグローバル化が遅れた背景として大きい。

国内市場とアパレル産業の今後

ラグジュアリーとマスボリュームに二極化する

以上のように閉塞感の漂う国内アパレル業界であるが、今後はどのようになっていくのであろうか。
まず、国内市場における二極化の進行と中間価格帯であるトレンドマーケットの落込みは当面継続する。トレンドマーケットでは消費者の価値観の多様化に伴い、服に対する好みや服の買い方は益々細分化され、デジタルがもたらす変化も相まってトレンドの小粒化と短サイクル化が進行する。グローバルと比較すると中間価格帯市場が大きかった日本の特徴は徐々に薄まり、ラグジュアリーとマスボリュームに二極化するという欧米型の市場構造に近づいていく。

ラグジュアリー市場

このような中で、ラグジュアリー市場とマスボリューム市場では、グローバル企業の存在感が増していく。ラグジュアリーでは、LVMHやケリングに続き、コーチ、マイケルコース等に代表されるアクセシブルラグジュアリー領域においてもブランドの買収とグループ化が進むと思われる。背景には、市場全体の成長鈍化に伴い単独ブランドでの成長に限界が見えてきていること、浮き沈みが激しいブランドビジネスにおいてポートフォリオ経営が経営手法として定着しつつあること、世界的なカネ余りの中でPEファンドの投資先がブランドビジネスに向いていること等がある。

マスボリューム市場

一方で、マスボリューム市場においてはグローバルSPAが更に躍進する。グローバルSPAが提供するコストパフォーマンス、ファッション性に太刀打ちできず、GMS等の小売流通系PBやローカルのストアブランドや量販店は衰退の一途を辿るだろう。

中間価格帯のトレンドマーケット

以上のような中で、中間価格帯のトレンドマーケットでは何が起こるのであろうか。当該市場では、市場の縮小とトレンドの小粒化・短サイクル化の同時進行が起き、市場を面で押えることが難しくなる。言い換えると、国内のトレンドマーケットのみで大きな売上を作ることは益々困難となるであろう。結果として、当該市場において成長を遂げて相応の企業規模となった総合系アパレルやセレクトショップの多くが苦戦を強いられ、市場ではまさしく微差の消耗戦が繰り広げられることになる。このような中で、団塊の世代が本格的に服を買わなくなる2018年頃から顧客が高齢化しているブランドの廃止や統合が加速化し、企業の合従連衡や退場が進むだろう。

個性のあるデザイナーズブランドやストリートブランドの台頭

一方で、当該市場では、個性のあるデザイナーズブランドやストリートブランドといった次代の芽もこれまで以上に台頭してくる。現在の市場は、多様化する消費者をニッチに捉えることができる中小のブランド、ショップにとっては、実はチャンスが多い競争環境なのだ。デジタリゼーションが進む中で、現在は10年20年前と比較すると、アパレルビジネスへの参入障壁が格段に低くなった。資金面ではクラウドファンディング、販売・マーケティングではEコマースとSNS、生産では“アパレル4.0”とでも称すべきデジタルサプライチェーンが登場しており、専門学校を卒業していない素人でもファッションへの情熱さえあれば簡単にブランドを作れてしまう。実際、インスタグラムで数万人のフォロアーを抱えるファッション通やモデルが、着たい服を作って月商1千万以上売り上げてしまうようなケースが登場している。

このように、トレンドマーケットでは才能のあるデザイナーやディレクターによるアパレルビジネスを支えるためのプラットフォーマーが、新しい企業組織として益々必要とされてくる。ZOZOタウンを擁するスタートトゥデイや、ファーフェッチのようなグローバルECプラットフォーム、ECビジョンのようなサプライチェーンプラットフォームは正にその典型例である。アマゾンも当該分野に狙いを定め、PBブランドの開始や東京コレクションへのスポンサーを始めている。このように中間価格帯では、従来型のサラリーマンアパレル組織は(グローバル化を試みない限り)縮小均衡の一途を迫られ、市場では表向きには多くの元気な小規模アパレルブランド、ショップが乱立する一方、裏ではITを効果的に活用しアパレルビジネスのバリューチェーンを補完するプラットフォーマーが、一部では商社の機能を代替しながら規模を拡大するという市場構造となる(図6)。正に、従来型のバリューチェーンのディスラプト(破壊)と再構築が起こるだろう。

勝ち残りに向けて

海外市場を地道に開拓していくこと

国内アパレル企業が、次の10年、20年を勝ち残るためのオプションは多くは無い。一定規模の企業が更なる成長を求めるのであれば、海外進出にチャレンジするしかないであろう。但し、その場合は一昔前のように出店ありきではなく、グローバルでブランドを作っていくための明確な戦略とロードマップが無くてはならない。日本市場を席巻してきた海外ブランドがそうであったように、グローバルでの勝ちパターンを踏まえ、事前に入念なリサーチを行い、ブランド戦略を作り、参入に当たっては現地企業とのパートナリングを有効に活用して、海外市場を地道に開拓していくことが必要だ。

事業のサステイナビリティを重視

一方、資本主義的な成長を志向せず、事業のサステイナビリティを重視して、コアなファンを大切に地道に事業を続けていくという道もある。このオプションでは長期的な考え方に基づく事業運営となるため株式市場への上場には向かないが、企業の理念や姿勢を支持する消費者セグメントが増加する中では、21世紀のアパレル企業の一つの考え方になると思われる。誰もがブルネロ・クチネリやミラ・ヘルポネンになれるわけではないが、デジタルを通じてローカルからの発信が開かれている現在では、ニッチでも世界に響く理念・デザインを表現したブランドを作ることができれば、家族的でサステイナブルな事業の継続はこれまでよりも遥かに現実味を帯びている。グローバルでは、ケリングのように大企業でもサステイナビリティ戦略を重視する企業も現れてきている。

自社のビジネスモデルに合わせてデジタルを有効活用

但し、いずれのオプションをとっても、自社のビジネスモデルに合わせてデジタルを有効活用することは重要だ。具体的には、自動生産とIOTの活用、マスカタマイゼーション、店舗におけるAI/ロボットの有効活用、越境EC、SNS、メイド・トゥー・オーダー等を適宜取り入れ、バリューチェーンを絶えず進化させて消費者に対する付加価値向上、カスタマージャーニーの進化を図ることが必要だ。

参照元

アパレル産業の未来
-国内アパレル企業の課題と進むべき道-
福田 稔

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