繊維商社とは
商社には総合商社だけでなく繊維に特化した商社がある
繊維商社(アパレル商社)は、国内外からの衣料品の原材料やテキスタイル、アパレル製品の仕入れや販売など、貿易・流通を主たる事業としながら、海外ブランドの使用権を取得して商品をつくるライセンスビジネスなど幅広い事業を展開する業種です。日本国内の繊維商社(アパレル商社)は、戦前の貿易会社が発祥とも言われています。
総合商社と専門商社
商社は大きく総合商社と専門商社にわけられますが、繊維商社は専門商社の中の繊維を扱う企業であることになります。専門の商品のみを扱う専門商社で、繊維の扱いに長けています。総合商社の中にも繊維部門がある企業もあります。繊維部門が強い総合商社は伊藤忠商事です。
今回は商社の中でも繊維専門商社について、説明していきます。
商社は人気の業界ですし、日本の繊維技術などは世界からも注目されています。
繊維商社は商社の立場として繊維業界を支える企業であり、国内外でグローバルに活躍している企業も多いです。
繊維商社(アパレル商社)は企業間取引で発生する仲介手数料を主な収入源としてきましたが、近年は繊維メーカーやアパレルメーカー、アパレル小売などが独自で物流ルートを開拓しているため、商社を介さない取引が業界全体として増えています。
天然繊維や化学繊維など幅広い繊維を扱う商社
繊維専門商社は繊維商品の扱いに長けている専門商社です。天然繊維や化学繊維など、繊維に関するアイテムを幅広く取り扱っています。これを読むと、「繊維商社はアパレルにだけ関連する企業なのか」と考える方もいるかもしれませんが、実際にはそうではありません。
ひとくちに「繊維」と言っても、「羊毛」などの衣料品に使われるものから、「炭素繊維」など自動車のボディの加工に使われるものまで幅広くあります。これらをもって、もちろん衣料品の製造に関連する企業との取引もしていますが、自動車製品や医療製品を製造する業界など、アパレル業界以外との取引も盛んにおこなっています。
国内外限らず、原材料を加工したり生産したりしている企業から繊維を調達します。
そうして調達した天然繊維や化学繊維を国内外問わずアパレル業界や量販店、自動車業界や医療分野といった幅広い分野に流通させます。
繊維の種類
繊維にもいろいろな種類があります。
-
天然繊維
綿や麻、絹、羊毛のように天然に繊維として存在するものです。
主に洋服などに使われることがあります。
-
化学繊維
化学的プロセスにより製造される繊維のことです。
ポリステルといった洋服に使われるものからプロミックス、炭素繊維など自動車の部品や医療製品に使われることもあります。
などが存在します。繊維業界といっても洋服だけを扱うわけではないということです。
繊維業界は繊維を調達して物流するだけではなく研究開発や生産技術事業にも手を伸ばし、素材の安全性評価なども行います。
こうしてクライアントの信頼を得たり、改善改良を行っています。
繊維商社の仕事内容は国内だけでなく海外とも取引をするグローバルな仕事
繊維商社が相手にしているのは国内市場だけではありません。ありとあらゆる繊維商品を扱うべく、海外にも広いネットワークを張り巡らせています。将来海外で仕事をしたいという方にとっては、おすすめできる業界だといえるでしょう。ただし海外市場との取引に関しては、他のアジア圏、とくに中国の繊維の安さに注目が集まっていることもあって、苦戦を強いられている企業も多く見られています。
それを補い、自社の強みを見出すために発展させているのが製品開発です。とくに化学繊維に関しては、国内のみならず海外のニーズも探って新しい商品を生み出し続けています。それによって中国の台頭にも負けない強い企業を作り上げているのです。
繊維商社の中の代表的な企業
東レインターナショナル
繊維業界業界トップの企業です。繊維会社大手の東レ株式会社を株主に持っている企業であり、衣料素材をはじめとしてさまざまな商材を取り扱っています。
東レと共同して素材の開発から企画、生産までを一貫しておこない、国内外のさまざまな場所で事業を展開しています。アパレルやファッション雑貨の分野にも強みがあり、さまざまな企業へ商材を提供している企業です。
衣料だけではなく、樹脂、ケミカル、フィルム、電子情報材料などさまざまな分野で事業を展開しています。アジア、ヨーロッパ、アメリカと事業拠点を持っており、世界中で活躍し、事業を展開している企業です。
ワールド
ワールドはアパレル業界でも有名な企業であり、製品衣料に強みがある企業です。グループ企業を多数持ち、繊維商社としての顔もあれば、アパレル販売店としての顔も持ち合わせています。
自社グループ企業で衣料品の製品開発、企画、生産、販売などをおこなっており、衣料に関わるさまざまな業務をおこなっています。国内に数多くのアパレルブランドを持っており、海外でもブランドの展開を進めているグローバルな企業です。
中国、韓国、台湾、タイなどアジアを中心に事業が展開されており、海外でも高い評価を受けています。繊維商社の中でも特に衣料の分野に特化した企業だと言えます。
蝶理
蝶理株式会社は繊維商社の老舗の企業で繊維事業だけではなく、化学品・機械事業などもおこなっており、海外にも事業を展開しています。
蝶理は繊維、化学品・機械の専門商社として、(商)×(工)を兼ね備えた「創る商社」として存在感を示してきました。市場や流通という川下分野を見据えながら、原料や資材といった川上分野の開発に携わることで、蝶理ならではの事業展開を推進しています。さらに売上の約7割が海外関連ということもあり、現在では海外35カ所に拠点を展開しています
【国内事業所】
■本社/東京、大阪
■支店/金沢
■その他/岡山、新潟
【主な海外事業所】
アメリカ、ドイツ、インド、中国、ロシア、タイ、インドネシア、フィリピン、シンガポール、チリほか
計35ヶ所
繊維事業では原料の取り扱いから、テキスタイル、資材の取り扱い、最終製品の開発など仕入れから製品開発までトータルにおこなっています。それぞれの部門に強みを持ち、国内の企業だけではなく、世界のさまざまな企業からも評価を受けている企業です。
海外事業では中国事業をメインに据えており、中国貿易のパイオニアとしての地位を獲得しています。上海には蝶理中国商業有限公司を設立し、現地法人5社、支店1ヶ所、事務所9ヶ所を設置し、精力的に中国で事業を展開しています。
帝人フロンティア
帝人フロンティア株式会社は旧NI帝人商事と旧帝人ファイバーの統合会社です。
帝人フロンティアはあらゆる繊維を取扱う専門商社です。“せんい”と一口に言っても、ファッション衣料、スポーツ衣料、スーツ・フォーマル衣料、アンダーウエアからその原材料まで、また非衣料用繊維においてもタイヤコード、インテリア、カーシート、スポーツギア等、皆さんの身の回りのありとあらゆる繊維を商材として社会貢献しています。
【国内事業所】
大阪本社、東京支社、名古屋支社、五泉支店、北陸営業所、松山事務所
【海外事業所】
ニューヨーク、ロサンゼルス、バンコック、ハンブルク、アハン、ロンドン、パリ、ヴェルチェッリ、香港、南通、上海、大連、青島、広州、ジャカルタ、ホーチミン、ビエンホア、ハノイ、マニラ、台北、ダッカ、ヤンゴン、メキシコシティ 他
NI帝人商事株式会社は衣料製品、繊維原料などをメインとした商社であり、帝人ファイバーはアパレル事業をおこなっており、衣料の分野に強みがあります。衣料繊維事業では素材開発から製品化までの事業をトータルに展開しており、完成した製品を自社グループ企業で販売していることも強みです。
仕入れから開発、生産、販売までを一手におこなっており、衣料の分野で大きく活躍しています。また衣料だけではなく、産業素材にも強みがあり、繊維商社としてさまざまな分野で活躍しています。
豊島
豊島株式会社は独立系繊維専門商社であり、原料を取り扱う素材事業から最終製品を取り扱う製品事業までを手がけており、繊維業界のスペシャリストとして活躍しています。
各種繊維品(綿花や羊毛などの素材からアパレルメーカーやセレクトショップ向けの製品まで)の卸売り及び輸出入、三国間貿易。言わば豊島は黒子。海外で服などの製品を作り、それを日本に輸入する。
素材部門では綿花をはじめ、羊毛、化合繊素材などの商材を取り扱っており、国内でもトップクラスの流通量を誇っています。素材や製品事業に強みがあるだけではなく、建設事業の分野で活躍していることも大きな特徴です。
さまざまな分野で活躍しており、国内だけではなく海外でも事業を展開しています。アジアをはじめとしてヨーロッパや北米、中南米にも事業を拡大し、さまざまな場所に拠点を持って活躍しているグローバルな企業です。
モリリン
モリリンは『豊かな暮らしの創造のため』に貢献するべく、繊維業の原点とも言える素材にこだわり、独自の素材開発にも力を入れてきました。紡績から織り・編み・染色・縫製まで、各工程に精通した人材が集まり、幅広い事業を展開しています。
会社としての設立は1903(明治36)年ですが、創業は1662(寛文2)年までさかのぼるという老舗中の老舗です。本社は愛知県一宮市にあります。原糸、原料をはじめ、テキスタイル(布地)、衣料などの各種繊維製品を全国のアパレルメーカーや卸売業者、量販店、専門店、通販業者などに対し販売しているほか、輸出入も手掛けます。
売り上げ構成は、アパレル製品が最も高く55%余です。次いでリビング製品約18%となっています。求める人材は、「チャレンジ精神旺盛でタフな人」。企業内は、リビング、マテリアル、オレフ、内装資材、クリエイティブ、繊維資材、産業資材、ライフスタイルに分かれています。
ヤギ
繊維専門商社として川上から川下までを網羅し、原料(糸)・テキスタイル・二次製品の3つの領域を中心に事業を展開しています。また、従来の中国や東南アジアだけでなく、近年は欧米にもネットワークを拡大しながら、グローバルにビジネスを構築。更に、ファッション・衣料分野以外の産業にも進出しており、「繊維専門商社」の枠を超えて事業領域の拡大を図っています。
繊維商社のヤギは大阪市中央区に本社を置きます。
【国内事業所】
東京、大阪、福井、名古屋、和歌山
【海外事業所】
中国、ベトナム、バングラデシュ、インドネシア、タイ、アメリカ、イタリア
全身の八木商店は「船場八社」と言われた店の一つで、八つのうち唯一ヤギだけが生き残りました。創業は1893(明治26)年、会社設立は1918(大正7)年です。
原料やテキスタイルのほか、スポーツウエア、インナーウエア、寝装品、インテリア商品も取り扱っています。社是は「終始一誠意」、ビジネス哲学は「堅実第一主義」。ただ120年という伝統の上に安閑としているのではなく、変革の時代に即した企業運営が信条となっています。
田村駒
大阪市に本社を置く繊維商社です。創業は1894(明治27)年、設立は1918(大正7)年です。
三和グループの一員です。事業内容は、衣料品の企画・製造・卸売りを行っています。経営理念のトップに挙げているのは「顧客信頼度No.1企業」。顧客に誠実・懇切に接するとともに、大いなる変革と創造をうたっています。
繊維商社についてのまとめ
繊維業界で生きていくには、まずは繊維業界についてを知り、業界の構造の理解を深めることが大切です。
どんな業界なのか、どんな仕事があるのか、どんな企業なのかについても知っていきましょう。売上高にも違いがありますし、企業のさまざまな面を知っておくことが大切です。今回は繊維商社について説明しましたが、繊維業界にはさまざまな企業がありますし、企業によって特徴や強みなどは違っていますので、それらを理解することが大切になってきます。